FIP制度とは?
FIP(Feed-in Premium)制度とは、再生可能エネルギー発電事業者が、発電した電気を卸電力市場などで販売した際に、その売電収入に加えて「プレミアム」と呼ばれる補助額が上乗せされる制度です。再生可能エネルギーを電力市場に統合し、市場競争を促すことを目的としています。
FIT制度との違い
FIT(固定価格買取制度)が国が決めた「固定価格」で一定期間電気を買い取るのに対し、FIP制度は発電事業者が自ら市場で電気を販売し、その「市場価格」に「プレミアム」が上乗せされて収入となります。つまり、FITが安定収入を保証するのに対し、FIPは市場価格が高い時間帯に売電するといった工夫次第で収益を最大化できるチャンスがある一方、価格変動のリスクも負う点が大きな違いです。また、FIP制度では発電計画と実績の差を調整する「バランシングコスト」を自身で負担する必要があります。
FIP制度導入の背景
FIP制度が導入された背景には、再生可能エネルギーの自立を促す狙いがあります。FIT制度によって再エネの導入は大きく進みましたが、国民が負担する再エネ賦課金が増加し続けるという課題がありました。そこで、発電事業者に市場を意識した発電を促し、再エネを電力市場に統合することで、より効率的で競争力のある電力システムを目指すためにFIP制度が導入されました。
売電と自家消費はどっちがお得?
結論から言うと、現在の電力市場では圧倒的に「自家消費」がお得です。その理由は、電力会社から電気を買う価格(買電価格)と、発電した電気を売る価格(売電価格)の間に大きな価格差があるためです。
例えば、2025年度のFIT買取価格(10kW未満、4月〜9月)は1kWhあたり15円ですが、電力会社から電気を買う際の料金は、燃料費調整額などを含めると1kWhあたり35円以上になることも珍しくありません。つまり、15円で売るよりも、35円で買う電気を自分で作って使った(自家消費した)方が、はるかに経済的メリットが大きいのです。
この価格差から、太陽光発電は「売って儲ける」投資から、「作って電気代を節約する」自家消費へと価値の軸足が完全に移っています。企業の経費削減や家庭の家計防衛において、自家消費型太陽光発電は非常に有効な手段と言えるでしょう。
2025年度のFIT買取価格(それぞれ1kWあたり)
・10kW未満(住宅用)…15円(4月~9月)
※10月以降は初期投資を補助する新しい制度(最初の4年間は24円、その後6年間は8.3円)が適用されます。
・10kW以上50kW未満(地上設置)…10円
・10kW以上(屋根設置)…11.5円(4月~9月)
※10月以降は新しい制度(最初の5年間は19円、その後15年間は8.3円)が適用されます。
・50kW以上(地上設置・入札対象外)…8.9円(4月~9月)
参考:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html(経済産業省 資源エネルギー庁)